2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

【第4話】慟哭

「なぁ見せろよ」 磯部が僕を羽交い絞めにして中島が僕の頭を押さえつけようとした。 「お前らふざけんなよ」 僕は中島の向こう脛を思いっきり蹴とばした。 「いてぇ何すんだ。このハゲ」 中島のボディブローが横っ腹にズシリと飛んできた。 「あんた達、何…

【第3話】屈辱

「照男、帰っていたのか……」 父の裕造が洗面所に入って来た。僕は咄嗟に手鏡を後ろに隠した。 父の頭髪をマジマジと見る。 「なんだ? 髪に何かついているか?」 「いや、別に」 僕は慌てて視線を逸らす。やっぱり薄毛でもないしハゲてもいない。50歳の父…

【第2話】真実

「マジだって」 桐島はポケットから手鏡を取り出して、僕に渡した。 手鏡は手の平より少しだけ大きめで、鏡の表面には薄く白い指紋が、いくつも付着していた。桐島が日に何度も手鏡を覗いては、薄くなっていく己の髪の毛に、溜息をつく姿が目に浮かんできた…

【第1話】悲劇の始まり

ランドセルを背負って、悪ふざけしながら一緒に登下校していた美咲が、中学に入ると登下校は疎か口も利かなくなった。然も赤い顔をして僕を直視しなくなったのだ。隣に住む幼なじみが何故、そんな態度を取る様になったのか。僕は全く見当が付かなかったが、…